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第47話 本当に欲しいもの。それは――

last update publish date: 2026-10-16 21:02:25

 燎は私を見つめたまま、笑みを深めた。

 昨日、控室でキスをした時と同じくらい、目が熱い。

 燎が身をかがめ、私の耳元へ唇を寄せた。

「ますます、手放したくなくなるな」

 私にしか聞こえない、低い声だった。

 熱い吐息が耳たぶをかすめ、首筋までぞくりとした。

 今、そんな声で言わないで。

 昨日のキスの続きを、欲しくなってしまう。

 燎の顔を見るのが悔しくて、私は神崎教授へ目を戻した。

 神崎が燎へ向き直った。

「鷺宮さん。では、外で待っていただけますか」

 燎は引いていた椅子を戻した。私と神崎教授、エリックを順に見る。

「終わったら、呼べ」

 扉が閉まってから、私は端末をテーブルへ置いた。

 神崎教授には、医療の現場で何が必要かを聞いた。エリックとは、今の技術でどこまで作れるかを話した。二人の助言を受けて、考えていた構想が、新しい製品の設計としてまとまっていった。

 新しい特許も狙えると、エリックは言った。

 早く作りたい。奪われたものを取り返すだけでなく、今度は、自分の新しい製品で勝ちたい。

 昼前には、二人とも一緒に開発すると言ってくれた。

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  • 夫がメイドを私の名前で抱いた――すべてを奪われた元・天才医療研究者は、冷徹社長に溺愛される   【お詫び】第48話の誤投稿について

    いつも『Senova』をお読みいただき、ありがとうございます。昨日、第48話として誤って別作品『ママごはん』の内容を投稿してしまいました。続きを楽しみにしてくださっていた皆様、大変申し訳ございません。本日、正しい第48話を改めて投稿いたしました。現在、第48話が二つ存在していますが、新しく投稿した「いい子だ。こんなに、僕……」から始まる方が正しい内容です。誤投稿分については担当編集者に連絡し、対応をお願いしております。今後は投稿前の確認を徹底いたします。引き続き『Senova』をお楽しみいただけましたら幸いです。

  • 夫がメイドを私の名前で抱いた――すべてを奪われた元・天才医療研究者は、冷徹社長に溺愛される   第48話 いい子だ。こんなに、僕を待ってくれてた

    「今夜は、私だけを見ていてください、正臣さま」  正臣が不思議そうな顔をした。 「ほかに誰がいるの」  そう言って笑う顔が、嬉しかった。  莉乃は正臣の肩へ頬を寄せた。あの女が戻りたいと言っても、この場所だけは渡したくない。  正臣がベッド脇の灯りを消した。  正臣の唇が離れたあと、莉乃はまだその熱を追うように、わずかに身を寄せていた。  今夜は、私だけを見ていて。  さっき自分から言った言葉を、莉乃は心の中でもう一度繰り返した。  正臣は笑いながら、莉乃の腰を抱えてベッドの中央へ引き寄せる。シャツの裾がめくれ、素肌が触れた。まだ少し残る整形の腫れを、正臣は指先でそっと避けた。 「痛いところは、触らない」  低い声でそう言われて、莉乃の胸の奥が熱くなった。正臣は莉乃の寝間着の肩をゆっくりと滑らせ、鎖骨に唇を落とす。キスというより、確認するように長く触れ続けた。 「よく頑張ったな、灯里」  耳元でそう呼ばれても、莉乃は否定しなかった。今は、この名前で褒められることが、自分への言葉に聞こえた。  こんなふうに愛されるなら、灯里になってもいい。  呼ばれる名前が違っても、正臣の隣にいられるのは自分なのだ。今夜は、それで十分だと思えた。  正臣の手が胸の下から脇を撫で上げ、指の腹で乳首を軽く押さえる。強くはない。ただ、熱を与えるように円を描いた。 「……んっ」  莉乃は小さく声を漏らした。正臣はその声を聞くように、もう一度同じところを指で擦る。 「ここ、敏感になってる。昨日の夜から、ずっと我慢してたのか」 「……はい」  正臣は答えを待たずに、莉乃の膝を押し開いた。寝間着の裾が捲れ、太ももの内側に指が這う。莉乃は反射的に脚を閉じようとしたが、正臣の手がそれを許さなかった。 「隠さなくていい。今夜は、君が欲しいところだけを、全部教えてくれ」  その言葉に、莉乃の腰が小さく跳ねた。正臣の指が下着の縁をずらすと、すでに濡れた感触が指先に触れた。正臣はそれを確認するように、ゆっくりと二本の指を沈めていく。 「……っ、正臣さま」 「いい子だ。こんなに、僕を待ってくれてた」  指が奥まで入り、ゆっくりと動かされた。莉乃はシーツを掴み、息を荒くする。正臣は焦らさず、けれど急がせもしない。親指で敏感なところを軽く押さえたまま、指を内側で

  • 夫がメイドを私の名前で抱いた――すべてを奪われた元・天才医療研究者は、冷徹社長に溺愛される   第48話 私は、あなたを応援したい

    「あなたの料理を審査するより、完成させる方を手伝いたいからです」  煌は、迷わずそう言った。 「でも、神楽坂と九条の関係があるんでしょう。煌さんが私の味方をしたら、困るんじゃないですか」 「困るでしょうね」  あまりにもあっさり認められ、糀は言葉に詰まった。 「それなら――」 「私は、あなたを応援したい」  煌は、まっすぐ糀を見た。 「だから、審査はしません」 「……私の料理だからですか」 「あなたの料理だからです」  まっすぐに答えられ、また顔が熱くなった。 「あなたが八年かけて作ってきた料理と、澄江さんから受け継いだ店を、私は知っています。それを知らないふりをして、美咲さんの料理と公平に比べることはできない」  嬉しかった。  煌が糀の料理を信じてくれていることも、向こう側に立たないと言ってくれたことも。 「手伝うって、何をするんですか」 「祖父の遺品を、もう一度調べます」 「それだけで見つかるでしょうか」 「九条にも、まだ何か残っているはずです。そちらは私が探します。あなたは料理を作ってください」  煌は少し間を置いた。 「できた料理は、私が全部食べます」  思っていた答えと違い、糀は煌の顔を見た。  先ほどまで、煌は糀が作った料理を一口ずつ大切そうに食べていた。「この味です」と言った時の、幸せそうな顔も覚えている。  試作をするたび、煌がこの席に座るのだろうか。おいしい時は目元を緩め、違う時には何度も味を確かめる。その姿を思い浮かべると、さっきまで苦しかった胸が少しだけ温かくなった。  食べることが難しい煌が、糀の料理だけは残さず食べてくれる。  そのことが、料理人としてどれほど嬉しかったか、煌は知らないのかもしれない。  糀は、もう一度写真を見た。 「どうして、今まで言わなかったんですか」  煌はすぐには答えなかった。 「言えば、澄乃七献のためにあなたへ近づいたと思われる」 「私が、そう思うと?」 「はい……思いました」  煌は黙った。いつもなら糀から目を逸らさないのに、今は写真へ視線を落としている。傷ついたような顔をされ、糀の胸も痛んだ。  しばらくして、煌がようやく口を開いた。 「あなたに嫌われるのが、怖かった」  どんな問題が起きても顔色ひとつ変えず、冷静に対処する有能な経営者

  • 夫がメイドを私の名前で抱いた――すべてを奪われた元・天才医療研究者は、冷徹社長に溺愛される   第47話 本当に欲しいもの。それは――

     燎は私を見つめたまま、笑みを深めた。  昨日、控室でキスをした時と同じくらい、目が熱い。  燎が身をかがめ、私の耳元へ唇を寄せた。 「ますます、手放したくなくなるな」  私にしか聞こえない、低い声だった。  熱い吐息が耳たぶをかすめ、首筋までぞくりとした。  今、そんな声で言わないで。  昨日のキスの続きを、欲しくなってしまう。  燎の顔を見るのが悔しくて、私は神崎教授へ目を戻した。  神崎が燎へ向き直った。 「鷺宮さん。では、外で待っていただけますか」  燎は引いていた椅子を戻した。私と神崎教授、エリックを順に見る。 「終わったら、呼べ」  扉が閉まってから、私は端末をテーブルへ置いた。  神崎教授には、医療の現場で何が必要かを聞いた。エリックとは、今の技術でどこまで作れるかを話した。二人の助言を受けて、考えていた構想が、新しい製品の設計としてまとまっていった。  新しい特許も狙えると、エリックは言った。  早く作りたい。奪われたものを取り返すだけでなく、今度は、自分の新しい製品で勝ちたい。  昼前には、二人とも一緒に開発すると言ってくれた。  私が考えたものを、この二人も作りたいと思ってくれた。それが嬉しかった。  扉を開けると、燎が廊下で電話を切った。  早く話したくて、私は彼の前まで歩いた。 「新しい特許も狙えるって!」  燎は私の顔を見て、笑った。 「もう、そこまで話したのか」 「うん。新しい製品の設計ができたの。二人とも、一緒に作ってくれるって」  言いながら、また嬉しくなった。  今度は、最初から私の名前で作るのだ。 「まだ、ちゃんと作れるかは分からないけど」 「だから、あの二人が加わるんだろう」  燎は私の肩に手を置き、顔をのぞき込んだ。 「俺の紹介だけで、あの二人は動かない」  私も、この人にもっと話したかった。今日、二人と考えたことを、まだ半分も伝えられていない。  何より、嬉しい時に、まず燎の顔を見たくなった。彼が笑うと、また話したくなる。 「お昼、一緒に食べない?」  燎の手が、肩から背中へ回った。 「その誘いなら、断らない」 ***  その日の夜、久条の屋敷で、莉乃は正臣の寝室にいた。  階下では、志津子が柊吾と会社の話をしている。夕食に招いたのだと、使用人から

  • 夫がメイドを私の名前で抱いた――すべてを奪われた元・天才医療研究者は、冷徹社長に溺愛される   第46話 俺にこの方たちを呼ばせておいて、俺を追い出すか

    「……そんなこと、言ってない」  説明会後の控室で、燎を見上げた。  何を言っているの。こんなところで。  そう続けるつもりだったのに、燎に腰を引き寄せられると、言えなくなった。  近づいた唇に、吐息が触れる。 「なら、離せ」  燎が、私のつかんでいる手首へ目を落とした。  離したら、この近さも終わってしまう。  それが嫌で、私は指に力を込めた。 「……いやよ」  燎の目が私の唇へ下がった。  今、自分が何を言ったのか分かって、顔が熱くなる。それでも、手は離せなかった。  唇が触れた。  思っていたより柔らかくて、すぐに離れたのが物足りなかった。  もう一度、触れたい。  首に手を回して、今度はもっと深く口づけたい。燎にも、私と同じくらい夢中になってほしかった。  手首から指を離し、その肩へ手を伸ばしたとき、扉の向こうで足音が止まった。 「続きは明日よ」 「明日もあるのか」 「仕事の話」  燎が笑う。  私も、今度は一緒に笑ってしまった。 ***  翌朝、奏汰の朝食と薬を見届けてから、私はSENOVAの開発室へ向かった。  約束の時間より少し早く着いたのに、神崎修一教授は、もう長いテーブルの向こうに座っていた。  小児消化器の共同研究を率いる医師だ。白髪の混じる短い髪と、動画で見ていた丸い眼鏡を見て、思わず足が止まった。  その隣に、エリック・ウォルシュがいる。海外の複数病院をつなぐ情報基盤を作った技術者で、背が高く、腕まくりしたシャツに細い時計をつけていた。  父と講演を見ながら、いつか直接話を聞いてみたいと言っていた二人だ。  半年先まで予定が埋まっている人たちが、本当に目の前にいる。まだ試作品もできていない、私の研究のために。  燎は、本当にこの二人を呼んでしまった。  なんて人なの。  手にしていた端末を持ち直した。  父にも見せたかった。でも、今日は私が話すのだ。 「桐谷灯里です。お時間をいただき、ありがとうございます」  神崎が立ち上がり、握手をした。 「お父様とは、一度お会いしました。あなたが続きを作っているそうですね」  父の名前を知っているのか。  嬉しかった反面、急に緊張した。期待されるのはありがたい。でも、父の娘だからで終わりたくなかった。 「最初は息子のためでした。今

  • 夫がメイドを私の名前で抱いた――すべてを奪われた元・天才医療研究者は、冷徹社長に溺愛される   第45話 勝つまで、キスも我慢するつもりか

     燎は笑みを浮かべたまま、すぐには答えなかった。説明会後の控室で、私たちは向かい合っている。  目をそらしたら、冗談にされそうで、私は見つめ返した。  早く答えてほしい。このままでは、何でもいいから欲しいと、余計なことまで言ってしまいそうだった。  燎が、少し顔を寄せた。 「俺の一日をやる。誰にも邪魔させない」  それから、テーブルに置いたままの腕時計へ手を伸ばした。 「それ、明日もくれるの?」 「明日は仕事だ。勝った後は、君の好きにしていい」  時計をつけながら、燎が私を見た。 「仕事でも、それ以外でも」  わざと、最後をゆっくり言った。  その視線が、私の口元へ下りた。仕事以外に何を欲しがるかまで、分かっているのだろうか。 「難しい交渉を全部頼んでも?」 「構わない。だけど、本当にそれが欲しいのか?」  燎は時計の金具に指をかけたまま、私を見た。  口元には悪戯っぽい笑みがあった。そのくせ、私を見つめる目は熱い。  まるで、欲望を丸裸にされているみたいだった。  交渉なんて口実だと、分かっているの?  仕事がなくても二人で会いたい。私だけを見てほしい。  でも、それをどう言えばいいのだろう。 「……何が言いたいの」  私は燎を睨んだ。  燎は小さく笑い、少し軽い調子で続けた。 「それとも、仮説でも聞いてほしいのか」  え?  懐かしい言い方に、私は動きを止めた。  まだ話したいと口にする前に、続きを促してくれる。そんな人が、昔もいた。  顔も本名も知らないまま、夜中まで研究の話をした人。 「あと五分。ひとつだけ、仮説を聞いて」  九年前、私はよくそう言って、その人を引き止めた。反論されれば腹が立つのに、返事が来るのは嬉しかった。  研究の話なら翌日でもよかった。それでも、会話を終わらせたくなかったのだ。  顔も本名も知らない。会ったことさえなかった。でも、あの人から返事が来るのを、毎晩待っていた。  私は確かに、あの人に好意を持っていた。  私は燎の顔を見た。  もし、あの人が、この男だったら。 「……あなたなの?」  燎の指が止まった。 「何のことだ」  私はその顔を見つめた。  あの人も、私が話し足りないことをすぐ見抜いた。まだ何も言っていないのに、続きを聞くつもりで返事をくれた

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